はじめに:
すき間がこわい日々
あたまの中がシーン、と静かにしてることってあります?
それとも、知らず知らずに情報を流し続けて脳がビジー状態?
何もしていない空白の時間って、なんか落ち着かないですよね?
だから、無意識にすき間を埋めたくなる。
何か見なきゃ、聞かなきゃ、埋めなきゃ…
まるで、静まり返った部屋にひとりきりでいるような、そわそわ感。
でも、このままじゃ、頭の中はずっとうるさいし、自分の行動が制御できないもやもや感。
もうやめたいんですけどー。
でも止められない・・。
脳のしくみ:
すき間を埋めたくなるのは、
わたしのせいじゃない
わたしの中には、小さな習慣の精霊が住んでいる。
名前は「ムクムク」。
ムクムクは、すき間ができるとすぐに動き出す。
「動画つけよっか?」
「SNS見る?」
「何か、何か…!」
彼は悪い子じゃない。
ただ、空白がこわいだけ。
でも最近、わたしは気づいた。
ムクムクの声の奥には、脳の深い仕組みが隠れている。
それは、習慣を守ろうとする“基底核”という番人。
そして、意志力をすり減らす“前頭前野”という働き者。
彼らは、わたしを守ろうとして、いつもの道に戻そうとする。
今回は、そんな「すき間を埋めたくなる衝動」の正体を、 脳科学とやさしい物語でひもといていきます。
そして、ムクムクと仲良くしながら、 すき間にそっと向き合う方法を、一緒に探してみましょう。
ムクムクが動き出すとき、脳の中でも静かにスイッチが入っている。
その正体は、「基底核(きていかく)」という、習慣の番人。
何度も繰り返された行動を “自動化” して、わたしを守ろうとしてくれる。
スマホを手に取る、動画を再生する…
それは、もう考えなくてもできる “道” になっている。
基底核は、森の中の小道のようなもの。
何度も通った道は、踏み固められて、自然と足が向かう。
だから、ムクムクが「いつもの動画、見ようよ~」と誘うのは、 脳が「安全で慣れた道」を選ぼうとしているだけなのだ。
でも、もうひとつの脳の働きも忘れちゃいけない。
それが「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という、意志力の司令塔。
新しいことを始めたり、誘惑に抵抗したり、選択をしたり…
この部分は、毎日たくさん働いて、エネルギーを消耗してしまう。
心理学ではこれを「自我消耗(Ego Depletion)」と呼ぶ。
たとえば、服を選ぶ、メニューを決める、人に気をつかう…
そんな “小さな決断” の積み重ねが、意志力をじわじわとすり減らしていく。
実験で
わかったこと
ある研究では、クッキーを我慢したグループと、自由に食べたグループに、 難しい課題を解いてもらった。
結果は…
クッキーを我慢した人たちは、すぐに諦めてしまった。
つまり、意志力を使った後は、他の場面での粘り強さが下がることがわかったのだ。
さらに、ショート動画を長時間見続けることで、 脳の「損失を避ける力」が弱まり、衝動的な判断をしやすくなるという研究もある。
ムクムクが「もうちょっとだけ…」とささやくのは、 脳が “次の報酬” を期待して、ドーパミンを出しているからかもしれない。
やさしい抜け道:
ムクムクと歩く、すき間の時間
1. 「入り口の儀式」をつくる
動画を見る前、スマホに触れる前に、ほんの1分だけ立ち止まる。
- 好きな香りを嗅ぐ
- 手を胸に当てて深呼吸する
- 「私はいさぎよい人」と、心の中で唱えて、かっこいい自分をイメージする
- どんな気持ちになりたくてこの行動をするのかを考えてみる
- この行動の後の気分を想像する
これは、ムクムクに「今から選ぶよ」と伝える合図。
脳にとっても、行動の“キュー”になる。
2. 「音の間(ま)」を感じる
自然音や静かな音楽の“あいだ”に意識を向ける。
- 雨音の切れ目
- ピアノの余韻
- 鳥の声が止んだ瞬間
この“間”には、脳がそっと休息する余白がある。
注意回復理論でも、こうした静けさが前頭前野を癒すとされている。
3. 「戻る儀式」を育てる
(+「どうにでもなれ効果」の対処)
ときどき、ムクムクに巻き込まれて、気づいたら動画の海にどっぷり浸かってることがある。
戻る儀式も忘れて、ただ流されるままに…。
でも、それは脳の自然な反応。
心理学では「どうにでもなれ効果」と呼ばれていて、 目標から少し逸れたときに、「もういいや!」と開き直ってしまう現象。
この効果は、“想定しておく” だけで発動しにくくなる。
「うっかり動画を見ちゃう日もある」
「戻る儀式を忘れることもある」
それでも、わたしは戻れる。
だから、ムクムクが暴れたあとでも、そっと戻る儀式を思い出してみよう。
- 「また波に乗っちゃった~」と笑ってみる
- 手を洗って、気持ちを切り替える
- 好きな詩を一行だけ読む
- 「私はいさぎよく止められる人」と、やさしく唱える
戻ることは、負けじゃない。
それは、わたしが自分を思い出す瞬間。
4. 朝の泉を活かす
意志力は、朝がいちばん澄んでいる。
だから、大切な決断や創作は、朝の時間に。
服や食事などの “小さな選択” は、前もって決めておくと、脳のエネルギーを温存できる。
まとめ:
すき間と共にいる勇気
すき間がこわい日々。
何かを埋めたくなる衝動は、脳の自然な働き。
ムクムクが動き出すのも、わたしを守ろうとしているから。
でも、そのすき間には、静けさと創造の種が眠っている。
脳のしくみを知ることで、わたしはムクムクと仲良くなれた。
そして、やさしい抜け道を見つけることができた。
失敗しても、戻れる。
戻ることは、負けじゃない。
それは、わたしが自分を思い出す瞬間。
あなたへメッセージ
もしあなたが、すき間を埋めたくて、ついスマホに手を伸ばしてしまう日があっても、 それはあなたのせいじゃない。
脳は、慣れた道を選ぼうとするだけ。
でも、あなたには、戻る力がある。
「音の間(ま)」に耳を澄ませてみて。
「私はこの渦から難なくスイッと抜け出せる」と、そっと唱えてみて。
ムクムクと手をつないで、すき間の小道を歩いてみよう。
その先には、あなた自身の静けさと、まだ見ぬ創造の泉が待っているから。
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