2015年に公開されたフランスのドキュメンタリー映画を紹介します。人々のインタビューと世界の美しい情景が映し出されています。
この映画は、Youtubeで公開されています。
もくじ
映画の紹介
人間を形作るものは何なのか。愛することなのか、戦うことなのか?笑うこと?泣く事?それとも好奇心なのか?
このような疑問から、フィルムメーカーでありアーティストでもあるYann Arthus-Bertrandは、60ヶ国2000人の男女のリアルなライフストーリーを3年かけて集めました。
HUMAN the movie
世界中のいろいろな人たちが、40の同じ質問に答える形で撮影されたそうです。
愛、お金・貧困、暴力、殺人、セクシャリティ、家族、死、幸福・・・などについて語られています。
私自身、知らず知らず自分の身の回りだけの狭い世界で考えがちになることもあります。
この映画はいろんな人々が、いろんな場所でいろんなことを考えて暮らしてるのだと改めて気づかせてくれました。
ショートクリップ3本
この映画は日本語への翻訳がされていません。
本編は非常に長いので、私が気になったインタビューのショートクリップに訳を付けて、いくつか紹介したいと思います。
私の解釈で訳しています。ご了承ください。
本編は一番最後に紹介しています。
◆ジョンのインタビュー◆
彼のおじいさんと過ごした素敵な時間について話されています。
祖父との素晴らしい思い出は、祖母が亡くなった直後のことです。
僕は祖父に会いに行きました。
落ち込んでいることは分かっていたけれど、その時彼がどんな段階にいるのかはよく分かりませんでした。
祖母は65年間、彼のパートナーであり、ドライバーでもありました。
僕は「おじいちゃん、大丈夫?」と言いました。
彼は「4ドルで町中どこでもシャトルに乗れるって知ってたか?」と言いました。
「すごいね、おじいちゃん」
祖父は言いました。
「食料品店に行ってね。カウンターの女性に言ったんだ」
”このリストのものが欲しいんだが、探すのを手伝ってもらえないかな?
妻が最近天国に移住したもんでね”
僕は言いました。
「すごいな。
おじいちゃんは、いつもグラスが半分満たされてるって、僕に思わせてくれるよ」
祖父は、後ろにもたれかかって僕の目を見て言いました。
「ただのグラスじゃない。うつくしいグラスだ」
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◆サミュエルのインタビュー◆
サミュエルは、お母さんを亡くしてしまいました。彼は悪魔(妖術師)だと見なされて持ち物を盗られたり、服を破かれたりすることもありました。学校に通うことが彼の人生を変えるための唯一の望みなのです。
子供は悪魔だ、と大人が言うんだ。
家族が死ぬと子供が食べたんだと言われる。
でも、誰かが死んだとき誰のせいでもないでしょ。
もし、悪魔が病気だって言うなら、病気らしく扱われるべきだ。
虐待されるんじゃなくて。
僕のおじさんが僕を虐待したみたいに。
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初めて外で寝た夜はたくさん泣いたんだ。
一人ぼっちだった。
お母さんのことを考えながら泣いたんだ。
お母さんが恋しかったから泣いたんだ。
そしたら誰かが僕の持ち物を全部持って行ってしまったよ。
服はぼろぼろにされてしまったんだ。
靴も盗られた。
はだしになっちゃった。
やっと眠ると誰かが僕に火をつけて燃やそうとしてるのに気づいたんだ。
また泣いたよ。
だって痛かったから。
でももう僕は慣れてしまったんだ。
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身の回りをきれいにしたり、食べたりとかってこと全部をやるのは、お母さんがいなくて一人だと大変だよ。
とっても大変。
お母さんがいた頃は、必要なものは全部あったんだ。
お母さんがいた頃は、清潔な服を着せてもらったし、ちゃんと靴も用意してくれた。
お母さんは僕を早く寝かしつけてくれた。
だって子どもは早く寝るもんでしょ。
お母さんは僕が必要なものをちゃんと用意してくれたんだ。
お母さんがいなくなって、ちゃんと眠れないし、ちゃんと食べられない。
ちゃんと洗濯もしていない。
何にも普通とは違うんだ。
もし、今日僕が人生を変えたかったら、方法は一つ。
学校に行くこと。
いつか行けるようになることを心から願ってるよ。
大学に行かなくっても、せめて一つくらいは卒業証書をくれるように神さまに祈るよ。
卒業証書がないといい仕事に就けないだ。
僕は困ってる人を助けたいんだ。
病院で働きたいんだ。
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なんで僕は地球のこの場所にいるんだろうって考えるよ。
ここにいて何か知らないけど、それをやる。
だって誰にだってミッションがあるでしょ。
だから僕にもミッションがあるんだ。
今はそれが何かは分からないんだ。
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◆キャメロンのインタビュー◆
キャメロン・ディアスは俳優業が彼女にとってどういう意味を持つのか、また父親を亡くした際の感動的な思い出について話しました。
私の名前はキャメロン・ディアス。
41才。
もうすぐ42才です。
映画俳優です。
カリフォルニアのロングビーチで育ちました。
今はロスとNYに住んでいて、行ったり来たりしています。
四季が好きなの。
他に何を話したらいいかしら。
大体そんなものでしょ?
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「あなたのような俳優になりたい」とか「あなたのような容姿になりたい」とか言われると、私はいつもその人たちに質問するの「どうして?」って
「本当にどうして?」
特にアメリカでは、名声を得るってこと・・有名になったらそれは成功したってこと、幸せだってことだと考える人が多いけど、そうじゃない。
私がやってることは有名になりたくてやってるんじゃないの。
それは一部・・有名であることは私の仕事なの。
うちにいるときはそうじゃないし、家族や友達といるときも私は有名じゃない。
ただの私。
私はキャメロン。
名声では私の本質は分からないわ。
もし自分をどんな人間か特徴づけるために名声を求めてるなら、決して幸せにはなれないわ。
いつまで経っても幸せを探し続けることになるの。
名声の中には幸せはないわ。
あなたがやっていることは、どうしてやりたいのかしら。
充足感はあなたの内側からやってくるの。
名声を求めることではなく、自分自身に誠実であることで湧いてくるものなの。
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私は本当に幸運でした。
私の両親の教育は本当に素晴らしかった。
最高の両親を持てて本当にラッキーでした。
彼らは私たちを信頼してくれて、力づけてくれて、全てを与えてくれたんです。
どんな時でも私たちをとても積極的に教育してくれました。
労働倫理、人としての在り方、人への接し方。
人間としての正しいあり方をとても大切にしていました。
彼らは人生の全てを愛していました。
私たちをとても深く愛してくれました。
愛されることがどんな感じなのかを知るということは、愛するすべと愛されるすべを知ることだと思います。
それはものすごく重要なことです。
彼らは姉と私にそのすべを示してくれたんです。
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父が亡くなった時、それがどういうことを意味するのか分かりませんでした・・
彼がいないということはどういうことなのかを分からずに・・
あの時が一番つらい瞬間でした。
母が父にお別れを言わなきゃいけないのは、見ていてとても辛かったです。
家族みんながそうでした。
あの時分からずにいたことはとてもしんどかった。
その後すぐに知った時・・、レッスンを学んだ時・・
翌朝起きて思ったの。
「パパが死んだ。もういないのね」
そしてこんなことがあったの。
私のそばに立つ父のビジョンを見たの。
もう一度見るともう彼の姿はなかった。
そしてそこには巨大な穴があったの。
本当に大きな穴。
ものすごく深くて底が見えないの。
とても暗くて、とても立ち向かえないような。
穴の反対側にはものすごい高さの泥の山。
とても高くててっぺんは見えないの。
本能的に穴のふちを歩いて行ったの。
自分が穴の周りを歩くのを見たの。
そして袖をまくって泥の中を登り始めたの。
泥の中に手を突っ込んで、手を引き抜くとエメラルドやルビーの束があって
こちらの手には金の杯。
とても困惑したわ。
でもすぐに気が付いたの。
オーケー、父は私に課題を残したの。
責任を。
私はこの泥山を登らなきゃいけないの。
とても無理に思えるけど。
そして彼が残した宝物を掘り起こしていかなきゃいけないの。
宝物やレッスン、私の人生を豊かにしてくれるものを。
私がそこを登っている姿が見えたの。
まだてっぺんに向けて登り続けてるの。
彼はものすごくたくさんのすばらしい宝物を残してくれたの。
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◆ソフィーのインタビュー◆
ソフィーの人生のターニングポイントは、ドラッグの過剰摂取により友人が亡くなるのを目撃したことでした。彼女は考えました。「自分の人生には2つの道がある。彼と同じように死ぬのか、人生を変えるのか」
みなさん、こんにちは。
ソフィー・マクスウェルです。
27才。
イギリス人です。
ソーシャル・ビジネスを運営しています。
the Really NEET Projectという、就業しておらず職業訓練も受けていない若者のためのビジネスです。
多くはホームレスや保護観察中の人、あるいは若い親です。
私はかなり活発な性格で、人生のお返しをしたいと思っています。
人生を変化させたいと考えています。
それが私の原動力です。
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子どもの頃は、虐待されて育ちました。
義父は性的にも身体的にも精神的にも虐待を行いました。
子どもの私は、この影響で何も夢など持てませんでした。
何者かになれるとも思えませんでした。
17才の頃、私はホームレスで保護施設で暮らしていました。
隣の部屋に住む2人が保護アパートメントに引っ越して来ました。
その人たちはドラッグをやっていました。
彼らはヘロインに手を出し、すぐにコントロール不能になりました。
3ヶ月後に若い男性が私と一緒に部屋にいる時に、ヘロインの過剰摂取で亡くなりました。
それで、裁判所に出頭することになりました。
彼の両親に何が起こったのか、何故そうなったのかを説明するために。
これが私の人生の決定的なポイントになりました。
「変えたい。変わる必要がある」
私の人生は望まない方向へ転落していました。
どうにかする必要がありました。
私の人生の分岐点は女性保護施設の保護アパートメントにいるときでした。
友人の薬物過剰摂取による悲惨な死を目撃しました。
裁判所で彼の両親に、なぜこの男性が人生の終わりを迎えることになったのかを告げました。
私は思いました。
「私の人生には2つの道がある。彼と同じ道をたどって死ぬことになるのか、あるいは別の人生を歩むのか」
数日後に地域のカレッジへ行って頼みました。
「どうか教育を受けさせてください。学びたいんです」
あの時、そこにはすばらしい講師がいました。
ポールという人です。
ポールは言いました。
「来なさい。僕といっしょに学ぶんだ」
「僕が教えるよ。僕はスポーツコースを担当しているんだ。ソフィー、君もそのコースを取ってほしい」
私はこう思いました。
「この人は、すごい。私は何の知識も持っていないのに喜んで私を受け入れようとしている」
ポールは、いつもホームレスの宿泊施設に迎えに来て、私をボクシングのリングに連れて行ってくれました。
ある日、ポールとボクシングをやっていて、お腹をパンチすると痛みで彼が声を上げました。
どうしたのか尋ねました。
すると彼は胃癌なのだと言いました。
彼は、最期の2年間を私に関わり、私が人生を信じられるようにしてくれました。
彼は、私が卒業する前に亡くなりました。
でも、一人の人間が私の大学進学を信じてくれたのです。
そして人生最期の2年にやってくれた事・・・
なんて素晴らしい人。
死に直面しながら、「諦めないよ。人を助けて、彼らが自分自身を信じられるようにするんだ」と。
一人の人がやってくれたことが、私にこう思わせてくれました。
「そうよ。私ならできる!」
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政治家に言いたいのは、若い人たちを彼らの環境を理由に切り捨てないでということ。
イギリスの政治家は若い人たちに労働を強制しようとしている。
でも、教育を受けていなくて、資格もなく、人生のトラウマを抱えているままで、どうして彼らが仕事に就けるでしょう。
私たちは、若い人たちに仕事をするというような大きな決断を強いる前に、彼らの事情を理解しなければなりません
時間をかけて根気強く向き合わなければなりません。
やがて彼らは変化します。
そして社会に変化をもたらします。
成功も収めるでしょう。
でも、彼らの人生における困難やトラウマを乗り越える時間が必要です。
HUMAN Vol.1~3
それぞれ約1時間半程あります。
英語字幕はついています。
vol.1の12:03に日本の方が登場されます。(日本語で話されています)
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